episode 120  リトル・クーデター

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「20世紀前半の話ですよ、お姉様」 エスプレッソを受け取ると 僕は気にせず胸元のカーネーションを愛でた。 「現にほら、僕以外にもいるはずなのに誰も挿してない」 やぶれかぶれ 浮かないテーブルを見回し呟くと 正面に座った薫が大仰にため息をついた。 「それはそうと昨夜の薫お兄様、とっても素敵でしたよ」 透けるように白い肌に 鳶色の巻毛のバイオリニスト。 「何言ってんだ。揃いも揃ってすぐに姿を消したくせに」 優しいのは見せかけだけ。 「みんな青い顔して座ってんのはそのせいだろ?」 傷口をえぐって 容赦なく塩を塗りつける。 「さあな、悪酔いして何も覚えちゃいない」 「僕もだよ」 誰にともなく言うと運悪く 青い顔した征司と九条さんは 同じタイミングで水差しに手を伸ばす。
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