episode 119  船上のアミューズ ②

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こんな戯れ やっぱりやめておけばよかったんだ。 誰ひとり得する人なんていなかった。 むしろ3人そろって ギリギリ踏みとどまっていた足場が 音を立てて崩れ始めたように揺らぐ。 「ごめんなさい……」 僕は気づけばベッドで膝を抱えて わんわん泣いていた。 九条さんも力尽きたように 壁に背中を預けたまま膝から崩れ落ちた。 「――くそっ!」 征司は僕らに背中を向けたまま 赤ワインの入ったグラスを白い壁に向かって投げつける。 「――お開きだ」 叩きつけられたグラスは 星屑のように瞬いて 粉々に砕け散り――。 赤いワインはまるで 今夜僕らの心が流した血のように 静かに壁を流れ落ちる。 「後味悪りい。一杯飲み直してくる。その間に出て行け」 傷つけあっても勝者なんていない。 これは戦争じゃなくて――つまり愛だから。
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