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こんな戯れ
やっぱりやめておけばよかったんだ。
誰ひとり得する人なんていなかった。
むしろ3人そろって
ギリギリ踏みとどまっていた足場が
音を立てて崩れ始めたように揺らぐ。
「ごめんなさい……」
僕は気づけばベッドで膝を抱えて
わんわん泣いていた。
九条さんも力尽きたように
壁に背中を預けたまま膝から崩れ落ちた。
「――くそっ!」
征司は僕らに背中を向けたまま
赤ワインの入ったグラスを白い壁に向かって投げつける。
「――お開きだ」
叩きつけられたグラスは
星屑のように瞬いて
粉々に砕け散り――。
赤いワインはまるで
今夜僕らの心が流した血のように
静かに壁を流れ落ちる。
「後味悪りい。一杯飲み直してくる。その間に出て行け」
傷つけあっても勝者なんていない。
これは戦争じゃなくて――つまり愛だから。
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