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「さあ、胸を張って」
どんな時でも
形だけは堂々と。
「ごきげんよう――お兄様、お姉様」
笑えない時ほど
丁寧に挨拶を。
「おはようございます、和樹坊ちゃん」
昨夜ぐっすり眠れたのだろう。
「いい朝だね、中川」
「はい、坊ちゃま」
ひとり爽やかな顔した中川だけが
笑顔で僕を出迎える。
「エスプレッソ。あとはこれだけでいいや」
テーブルの一輪挿し。
グリーンのカーネーションを手にとって僕は胸に挿した。
「さすが良く似合うわ」
「何です?」
真っ先に絡んできたのは他でもない。
夕べ僕にやりこめられた女王様だった。
「グリーン・カーネーション、ゲイのシンボルでしょ?」
さすがに
スリップドレスは懲りたのか。
昨晩とはうってかわって
完璧な淑女の装いで
モーニング・ティーをすする。
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