episode 120  リトル・クーデター

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「さあ、胸を張って」 どんな時でも 形だけは堂々と。  「ごきげんよう――お兄様、お姉様」 笑えない時ほど 丁寧に挨拶を。  「おはようございます、和樹坊ちゃん」 昨夜ぐっすり眠れたのだろう。 「いい朝だね、中川」 「はい、坊ちゃま」 ひとり爽やかな顔した中川だけが 笑顔で僕を出迎える。 「エスプレッソ。あとはこれだけでいいや」 テーブルの一輪挿し。 グリーンのカーネーションを手にとって僕は胸に挿した。 「さすが良く似合うわ」 「何です?」 真っ先に絡んできたのは他でもない。 夕べ僕にやりこめられた女王様だった。 「グリーン・カーネーション、ゲイのシンボルでしょ?」  さすがに スリップドレスは懲りたのか。 昨晩とはうってかわって 完璧な淑女の装いで モーニング・ティーをすする。
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