episode 101 ブロンド美人

4/15
前へ
/367ページ
次へ
「彼らが捜してくれないから、拗ねてるんだ?」 「――そんなんじゃないよ」 『和樹――俺たちの間に起こった事 すべては戯れだったんだ』 あの悲惨な夜から幾晩 『征司くんを選んだんだね』 悪い頭をひねって考えたけど 納得のいく答えなんて出ない。 だから帰りたくても ――帰れやしない。 「まあいいさ。僕は君が好きだし。飽きるまでいるといい」 シャワーを戻し蛇口を閉めると 「さ、できたよ」 椎名さんは僕の身体を引き起こす。 「――ん」 染めあげたばかりの 毛先から滴る水滴は――。 首筋を伝い、いまだ僕の胸元で輝く王子様からの贈り物を輝かせる。 「そんな切ない顔するなよ。君には似合わないぜ?」 背後から髪を拭いてくれる。 優しい手とふわふわのバスタオル。 「分かってる。いいよ、自分でやるから――」 忘れたいのに 何度もこうして愛されたこと 否が応にも思い出してしまう。
/367ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1048人が本棚に入れています
本棚に追加