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「ねえ、それにしてもさ。ひとつ屋根の下にいるのに――あなた今回ばかりは僕に手を出してこないね。どうして?」
切ないと言われた顔を
バスタオルで隠して――。
僕はいつもの調子で椎名さんに詰め寄る。
「いいんだよ、別に――むしろ今なら」
「やめてくれ。傷心の相手につけ込むのは趣味じゃないし、上げ膳据え膳っていうのはどうもね」
誘い込む僕の手を掴んで
「性に合わない?」
「ああ」
指先に落とされる
紳士的なキス。
「逃げる相手を追いたいんだ?根っからのハンターですね」
わざと明るく笑って
僕は肩をすくめて見せる。
「でもほら、見てごらん」
椎名さんは僕の頭をすっぽり覆っていたバスタオルを取り払うと
「今の君に迫られたら、さすがに僕も戴いてしまいたくなるね」
鏡の前に立たせる
まっさらなブロンドの
新しい僕の姿――。
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