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「鏡よ、答えてくれ。弘喜は俺の子供なのだろうか」 鏡の中の主は…微笑んだ様に見えた。 『そうだ』 「……え」 『そうだ、主と妻の子供だ』 「…………」 旭は目を真ん丸にしてその答えに驚いた。 まさか、自分との子供だなんて思っていなかったのだろう。 「…そ、そうか………」 安堵の息を漏らすが、どうにも釈然としない。 『不服か?』 旭は鏡の中の主の声に、ガバっと顔を上げるとバツが悪そうに「…いや」と呟く。 「ずっと、抱いていた疑問だったから、そう言ってもらえてよかった。 私は妻を信用してよかったんだ」 旭はそう言うと、はっきりと 「ありがとう」 顔を上げて鏡に向かって告げた。 鏡の中の主は微笑んだ様に見えた。 それから旭は洋館を後にする。 そんな旭がいなくなったのを確認してから鏡の中の主は思う。
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