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(人間ってものはどうして、こうも脆いのか) 本当は弘喜は旭と妻の子供ではなかった。 だけど、それを伝えようが、伝えまいが、二人は後に離婚するのをわかっていた。 結局、旭は信じ切れずに、妻に言ってしまうのだから。 言ってはいけない禁忌(タブー)を。 旭は自分の子供だと告げられて、信じるどころか更に疑ったのだ。 そう、それはまるで何の証拠もない携帯電話のように。 何もないと分かれば分かるほど、おかしかな。 人と言うものは不安になる。 一度疑問を持ってしまったら二度と、その呪縛からは逃れられない。 (もっと早くに問いただせばよかったものを) 旭は何もかもが遅すぎたのだ。 だけど、それも運命。
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