信人

3/8
前へ
/46ページ
次へ
「大丈夫?」 「あった?」 中に入っていない響子と風子が信人と南に声をかけた。 その声に曖昧に返事をしながら、信人は懐中電灯で辺りを照らす。 そして。 「………見つけた」 ぽつりと信人が漏らすように呟いた。 それに南も近付き、部屋の外にいた風子と響子も男子に恐る恐る近付いた。 「大きいね」 「本当に」 響子と風子がまた、呟くように言う。 信人はその鏡の大きさに圧倒されていた。 でかい鏡など、見る機会はあるはずなのに。 どうしてか、ここにある鏡は他とは全く違っていた。 その何かはわからない。 ただ、何も言葉に出来なかった。 「なあ、信人、言えよ」 「は?」 隣で同じ様に放心していた南が我に返った後、信人の肘をつついてそう言った。 それに訝しげな顔をする信人。 後ろにくっついている女子二人を見ると、南と同じ様に思ってるのか頷いている。 (……まあ、いいけど) 小さく溜息をつくと、信人は一人前へと進んで鏡の前に仁王立ちした。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加