少年

7/11
前へ
/46ページ
次へ
「俺の…、俺の父親は誰なんだ」 『真実を知りたいか』 「………知りたい」 『知ってどうする?』 「じゃあ、何で知らなくていいと思うんだ」 『旭を父親だと思えるだろう』 「思えてたらここに来ない!」 『何故だ』 弘喜は舌打ちを鳴らす。 堂々巡りの、鏡の主との会話に苛立ちを隠せなかった。 「お前が何て言ったかは知らないが、その所為で俺の両親は離婚したんだ!」 『それは間違っている』 「何がだ!?」 『どちらの回答をしようとも、結局は離婚をする』 「そんなわけない!」 『では、主に問う。 旭の質問を知っているか』 「……、し、つもん?」 弘喜の父親の筈の旭が、この鏡に何て質問をしたか。 それを直接弘喜は聞いた事がない。 だから、知っているわけなかった。 そんな弘喜に鏡の主は淡々と、その事実を伝える。 『旭は、“弘喜は自分の子供なのか”そう、我に問うた』 「………え」 鏡の主の言葉は、想像以上に弘喜の心にダメージを与えた。 父親は誰だ、そう思っていた弘喜だったが。 心の奥底ではきちんと、旭を父親と認識していた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加