少年

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『無駄な事を。この鏡は割れない様に成っておる』 「嘘なんて…何でついたんだ!」 『さっきも告げた筈だ。どちらを告げても結果は一緒だったと』 「ちげえ!!」 弘喜はでかい声でそう怒鳴った。 それから、キッと鏡の主を睨みつける。 「もしも、あの時に“違う”と伝えていたら俺の“親父”はあそこまで苦しまなかったんだ!!」 『苦しむ?』 「そうだろ?違うとわかっていたら、母親と喧嘩だってしてなかった筈だ! 離婚してても…もっと、違った…」 『離婚する。その事実に相違ない。ならば、どちらを告げようが真実だろう』 「ふざけんな!お前は受けなくてもいい苦しみを親父に与えたんだ!」 『苦しみ、とは何だ』 この鏡の主の質問は、決して弘喜を馬鹿にしてるとかではない。 本当にわからないのだ。 だけど、頭に血が上っている弘喜は更に鏡の主を責め立てる。 「何でわかんねーんだよ! お前に俺の苦しみなんてわかんねえ!!父親が誰かわからない恐怖って言うのは!!」 『主の父親は前の男だ』 冷静に返す鏡に、弘喜はカチンと来る。 怒りで頭が煮えたぎり、抑える事が出来ない。
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