由香里

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だけど、小学校に上がり友達の家へ遊びに行った時に衝撃を受けたのだ。 その友達を抱き締める、母親の温かい姿に。 由香里はただの一度も抱き締められた事がなかった。 あったのかもしれないが、記憶には残っていない。 由香里が小さい時からもう既に母親は由香里に触れる事がなかったのだ。 触れるのは、暴力を振るう時。 それから、由香里は塞ぎこむようになった。 学校でも友達の輪に入る事が出来ず、輪の外で一人読書をする様になった。 時間の潰し方が他になかったから。 そんな由香里に話しかけようとする奇特な人間もいない。 だから、由香里は中学へ上がっても一人だった。 恋だってした事がない。 ただ、学校には毎日通った。 家にいたら、母親に殴られるから。 父親は昔に女を作って出て行ったと聞いている。 物心ついた時に、由香里は母親を恨んだものだ。
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