由香里

8/9
前へ
/46ページ
次へ
『…主。聞きたい事はそれだけか』 「はい、それだけです」 『驚かないんだな。ここに来たモノは皆、我の姿を見て慄く』 「…いると、思ってましたから」 『クク、いると?そうか』 表情もわからない、鏡の主が微笑んだ様に由香里には見えた。 『では、その問いに答えよう』 ゴクリと由香里は生唾を飲み込んだ。 鏡の主の答えを由香里はじっと待つ。 『―――――……その答えは、母親だ』 その言葉に、由香里の目が見開く。 (…何だって?) 今、確かに鏡の中の住人は母親って言った? …私のお母さんが、泣く? 私が死んで? 由香里の頭は混乱していた。 鏡の主の言った言葉が理解出来なかったのだ。 私がいなくなって泣くのなら、何故あんな事をするの? 私が嫌いなんじゃないの?いなくなって欲しいんじゃないの? 『信じられないか?』 狼狽する由香里を見て、鏡の主はそう声をかける。 由香里は真っ直ぐに鏡を見つめて、こくりと一度頷く。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加