「アシンメトリー」

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何も想ってないフリをして立ち去るくらい容易く出来る。 出来ると思い込まなきゃ動かないんだ、足が。 いつもより視線を下にして歩く。心臓の音がもっと大きくならないよう足早に。 ザッ… 「待って」 「…っ」 なんで。どうして声、掛けるかな。 昨日までパッタリ途切れていた朔タローとの会話。 今だって決して声は掛けられないと思っていたのに…なんで、 「唯乃さん、上…見て」 こんなに胸が苦しいんだろ。優しいけど戸惑ってる朔タローの声が頭の中を支配する。 無視しようにも今の私はそれを許さない。心の奥にいる唯乃がそうさせてくれない。
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