第2話

Dive case 02 Smile distorted 2

ぐにゃり・・・と視界が歪み、

目の前には、レンズ越しに声をかけてくる男と、

射るような目つきで腕組みしながら見つめるスタッフたち。

知った仲のスタッフを集め、私の写真集を作ろうという話になった。

写真集のため連日深夜まで撮影が続く。

私がモデルを始めたころ、駆け出しの新人だったヘアメイクの由実さんは、今では弟子が何人もいる先生に。

今日のカメラマン神田俊之・かんちゃんは、カメラアシスタント時代から知ってる。

「いつもの笑顔ちょうだい～」

かんちゃんは、こんなチャラチャラしたやつじゃなかったんだけどな。と思いながら、シャッターを押すたびに表情を変える私に満足げな声をあげた。

他の現場のテンションでやられると少々やりにくい。

きっと、ほかのモデルちゃんたちは、かんちゃんの今のノリが好きなんだろう。

頭を空っぽにして口角を上げ、歯を見せれば笑顔の出来上がり。

そのはずだ。

頭でわかってるけど、どうしてもできない。

私がうまく笑えないことを知ってるスタッフたちだから、今回の写真集を作る気になった。

”いつもの笑顔”は、ちょっと人をこばかにしたような、薄ら笑いにも似てる。