お化け屋敷の達磨

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 私の住む集落にはお化け屋敷があった。夜になると女の人のすすり泣く声が聞こえたり、不気味な獣のような唸り声が聞こえたりするという噂がある。十年以上前は人が住んでいたらしいけど雑草がぼうぼうと生えた庭と不気味な佇まいの家だけが残っている。  ある日そこに行ってみようって話になったけど、結局誰も来なかった。私と康代ちゃん以外誰も。 「みんな遅いね。」  康代ちゃんはこの集落で一番、可愛い女の子だった。テレビに出てくる子たちみたいな、目がぱっちりとしていて、まつ毛の長い黒い目をした女の子だ。 「来ないと思うよ。」  本当は、私にいじわるしてみんな来なかったって知ってた。  康代ちゃんは優しいし、いじわるなんてしない。でも、少し天然なところがあるから、私をいじめているって知らずにここに来ちゃったんだろうと思う。  門の前で家を見上げて、康代ちゃんは言った。 「じゃあ、二人で入ろうか。」  康代ちゃんが笑った。私は、どうしようか迷ったけど康代ちゃんはどんどん進んでるから私もついて行った。門をくぐった瞬間に、ヒヤッとした嫌な空気が耳の後ろを撫でた。 「どこから入ろうか。」  草がぼうぼうに茂る庭を康代ちゃんは気にせず歩く。窓ガラスは内側からふさがれて中は見えないし、隙間から誰かがこっちをのぞいてそうでもっと怖い。  黒い髪の毛をひらひらさせて、康代ちゃんは家の壁を見ていた。  きれいな長い髪を康代ちゃんはしている。長い手足をしていて、男の子よりも背が高い。可愛い服を着れば雑誌のモデルみたいに見える、と思う。女の子はみんな康代ちゃんにあこがれている。でも康代ちゃんはそんなことにも気づいていないような子だった。  康代ちゃんが何かを見つけたみたいで、立ち止まった。 「ね、工藤さん。ヘアピン貸して。」  私は髪にさしていたピンを外して、康代ちゃんに渡した。康代ちゃんはヘアピンを扉の間に差し込むと、それを上下に動かした。  引き戸はすぐに開いて、部屋の中が見えた。康代ちゃんは気にせず入っていく。 「曾我さん、やめようよ。」  さすがにいけないと思って言うと、康代ちゃんは笑った。 「平気だよ。」  康代ちゃんは手提げの中に入れていた懐中電灯の明かりをつけて入っていく。怖いけど、康代ちゃんだけをほおっておけなくて、私も入った。
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