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翌日、謝った子たちが私に挨拶をして、ぎこちなく康代ちゃんに挨拶をするとにっこり笑って挨拶をし返した。
だから私は、康代ちゃんが他の子たちにこんなこと止めるように言ったのかもしれないと思った。
放課後、今日は康代ちゃんも手伝いに来て一緒に掃除をしていた。仲直りをしたことが嬉しくて、みんな康代ちゃんに話しかけた。
「ね、今度こそお化け屋敷行こう。今日終わったらみんなで。」
私はその時、思わず言ってしまった。
「もう行くのやめようよ。本当は行っちゃいけないんでしょう。」
本当は行きたくもなかったみたいで女の子たちはみんなそうだねって言った。でも、康代ちゃんは私をじっと見た。
その眼が、あの日の帰り道と一緒で怖くて、私はびくっと震えた。
掃除用具をしまって帰るとき、康代ちゃんが私に一緒に帰ろうって言った。一緒に帰りながら、康代ちゃんは言った。
「あの家のこと、なにか聞いた? 」
なんでもないように言われて、私は正直に言った。
「曾我さんのお母さんの家だって。お祖母ちゃんが、具合が悪いからあんまり迷惑かけないようにって。」
康代ちゃんが振り返った。目を大きく瞬きして私を見る。
「今は家にいないよ。」
入院している意味だと思って、私は無遠慮に聞きすぎたと思った。
「……ごめんなさい。」
康代ちゃんがふふっと笑った。
「謝らなくていいよ。みんな知ってるよ。」
「曾我さんもお母さんのこと、心配でしょ。早く良くなるといいね。」
「良くなるかなー。」
くすくすと康代ちゃんが笑うので、私は不思議に思った。康代ちゃんは心配じゃないのだろうか。
「工藤さんちも同じでしょ。お母さん、ずっと働いてるって。いないなら、働いてても入院してても変わらないもの。」
私は一瞬嫌な気分になった。でも、いいやって思って言った。なんとなく吐き出したいような気分だった。
「私のお母さんは、私が邪魔だから置いて行っただけだよ。みんな知ってる。」
そう言うと、康代ちゃんが私を見た。
「だから、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは私のこと押し付けられたの。いらなかったから。」
夕日の逆光で康代ちゃんの表情がよく見えなかった。
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