お化け屋敷の達磨

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誰かがこっちに来る音がした。足音で男の人、たぶん大きな人だと思っていると康代ちゃんのお祖父さんが来た。 「お、居った。アイス持って来たから食べなさい。」  手招きされて私は集めた草を持って立ち上がった。 「ありがとうございます。」 「気にせんでいい。祭りの準備手伝ってもらっとるからな。」  見ると全員にアイスが配られていて、私だけ離れていたから気づかれなかったらしい。 「康代も手伝わさないといけんのだが、うちの方が忙しくて申し訳ない。」  お祖父さんは先生と何か真剣な顔をして話していた。  アイスクリームを食べ終わると、今日の掃除はもう終わりなので帰っていいと言われた。その時に、集団登下校をさせられた。  家に帰り、夕飯の買いものに出た。今日はお祖父ちゃんと一緒だった。  なんとなく、大人たちがひそひそ話しているような変な気がした。どうやら不審者が出たらしい。こんな小さな集落で出ればすぐ見つかるだろうと思っていると、お祖父ちゃんがため息をついて言った。 「達磨さん上げるときに罰あたりなことだ。」  不審者と罰当たりがどう関係しているのか私にはわからない。お祖父ちゃんの顔は苦々しい顔で、聞かない方が良い気がした。  でもお祖父ちゃんの愚痴はお酒が入ると進んだ。 「こんな罰当たりなのは宮日の時以来だな。」 「誰? 」  おじいちゃんはごくっとお酒を飲みほした。 「昔、三葉さんちが達磨上げようとしたときに入れるはずだった銭やら指輪やらが盗まれたことがあってな。宮日家の男が盗んでいった。嫁さんは首吊って。かわいそうなのは残った子らだ。上の子は高校決まっとったのに働きに出て、下の子らも働くことになった。一番下の子が、その時五歳だったな。」 お祖父ちゃんの眉間にはしわが寄っていた。 「その人たち、どうなったの? 」  お祖母ちゃんが私にお茶を入れてくれた。 「上のお姉ちゃんは今三葉さんちでお手伝いさんをしてるよ。真ん中のお兄ちゃんは曾我さんのところでお勤めしてるし、一番小さかった子も大きくなって国立の大学に今は通ってるよ。」  怖い結末を想像していたのに、ハッピーエンドだったのに驚いた。でも、子供たちだけで生きていくのはきっと私が体験したことのない大変な毎日だったんだろう。  私よりも苦労をしている人がこの世界にはたくさんいるんだと思うと安心した。
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