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お祖父ちゃんとお祖母ちゃんと一緒に畦道を歩きながら私は尋ねた。
「お祖母ちゃん、学校の裏をずっと行ったところ、空き家があるでしょ? あれどこの家なの? 」
お祖母ちゃんは目をぱちくりさせた。
「徳田さんち? なんでそんなことが気になるの? 」
「学校に近いのに誰も住んでないから、誰かすんだらいいのにって思って。」
私が嘘をつくと、お祖母ちゃんは困った顔をして言った。
「そう言ってもね、新しく来る人もいないし。あぁ、でも沢城さんが住むって話もあったね。」
沢城も移ってきた人なんだって知って驚いた。私のこと、よそものって嫌ってたようだったから。
「あそこは徳田の娘さんが戻ってきたときのための家だから、曾我さんちが手放さんだろ。」
お祖父ちゃんが言った。
「曾我さんちの家なの? 」
お酒を持っていくと、お祖父ちゃんは言った。
「昔は徳田さんが住んでた。徳田さんが山で行方不明になって、しばらくは嫁さんと娘さん二人が住んでたけどな。嫁に行って今は誰もおらん。」
それがどう康代ちゃんと関係しているんだろうと思うと、お祖母ちゃんが付け足した。
「娘さんの妹のほうが、康代ちゃんのお母さんなの。具合悪くしてお屋敷にこもってるんだよ。」
びっくりした。
そんな秘密があれば、康代ちゃんも怖がらずに入っていける。自分の家みたいなもんだ。でも、それなら今自分の家がお化け屋敷呼ばわりされてることが、許せないんじゃないか。
「だから、あんたが曾我さんちに行ったって聞いて驚いて。」
お祖父ちゃんがじろっとお祖母ちゃんを睨んだので、お祖母ちゃんは口を押えた。
私は、祖父母があんなに申し訳なく思った理由が分かった。病気の人がいる家に子供の私がお邪魔するなんて、あまりいいことじゃない。
「曾我さん、お母さんが具合悪いって言わなかった。大変なんだね。」
私がしょんぼりして言うと、お祖父ちゃんは咳ばらいをした。
「まぁ、仲良くすることはいいことだ。だけどあんまりご厄介になるのもな。」
私はうなづいた。
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