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その時だった。背後から大きな叫び声がした。お祖母ちゃんの手がびくっと震えて、お祖父ちゃんが振り返った。私も振り返った。そこには康代ちゃんの家があった。
さっきまでいた場所なのに、そこが急にお化け屋敷みたいに見えた。
お祖父ちゃんがお祖母ちゃんを押して、私と一緒に先に帰らせた。お祖母ちゃんの手はガタガタ震えていた。
家に帰って、二人で待ってる時間はそれほど長くなかったと思う。でも、時計の秒針が動く音がとても大きくて、何回も聞こえたような気がした。
帰ってきたお祖父ちゃんはなんでもないように笑った。
「裏の家でイノシシ捕まえたそうだ。」
そういうと、お祖母ちゃんはほっとした。
私は、イノシシの鳴き声なんか聞いたことないからわからないけど、あれはなんとなくだけど、動物の声には聞こえない気がした。女の人のような、すごく怒っているような、怖い声だった。
でも二人がそうなんだって言うから、私もそうだと思うことにした。
考えたって怖いのは変わらなかった。
学校で夏祭りの準備が始まった。と言っても花巫女に選ばれた子供たちはもうとっくに踊りの練習をしていた。選ばれなかった子たちは山車の飾りを作ったり、神社を掃除したりした。
康代ちゃんは祭りの主催の家の子なので、家の手伝いで帰って行った。
私は神社の草むしりの班に混ざっていた。すると、今まで話したことのない女の子たちが話しかけてきた。
「工藤さん、ごめんね。今まで、からかったり無視したりして。」
私は驚いた。ここに来る前も学校でいじめられたことはあったけど、こんな風に謝ってくる子はいなかった。
「いいよもう。」
どうでも良かった。そういうと、許されたんだって思った女の子たちはほっとしたように笑った。
でも沢城だけは私に近づかなかった。
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