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瞼を刺激する暖かいものを感じ、目を開ける。
「またか・・・。」
簡素な部屋のベッドの上で、黒っぽい灰色の髪をした黒い瞳の少年は目を覚ました。
そして、窓を押し上げて清らかな空気を取り入れる。
まだまだ冷える朝の風は、火照る身体に丁度良かった。
しばらく空を自由に駆ける鳥を眺めて、身仕度を始める。
「あ~、ダルいウザい死ね。」
少年の住む建物の1階は、酒場と化していた。
朝から屯する厳つい男達の挨拶を無視して、誰にともなく独り言ちる。
情け容赦のない言葉は、少年の鋭い目付きと合わさって、周りの男達よりも物騒な雰囲気を醸し出していた。
入り口の正面に鎮座する無駄に広いカウンターの一角で適当なものを注文し、男共を退かして特等席へと辿り着く。
「あ、おはようカイン。」
そこには、特別メニュー『肉肉祭り ver.鬼』を貪る、薄い水色の髪をした少女が座っていた。
透き通るような白い肌に浮かぶ深く青い瞳は、男共を引き摺り落とす魔法がかかっているのかもしれない。しかし、容貌も台無しになる性格の悪さは、正しく悪魔。この可憐ぶってる美少女は、一言で言うならば、伝説上のサキュバスだろう。
当然だが、俺はこの少女の性悪さを身を以て体験しているので、朝の挨拶もそこそこに『肉とは何か ver.上級者』を貪り始めた。
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