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「……ロミ・ミ・ニケーラさん、残念ながらあなたには能力開花が望めません」
「……え?」
残酷だった。学校で受けた能力適正診断、どんなのを持てるんだろうなんて期待してた私に検査官の人が言ったのは、考えてもみなかった最悪の結果だった。
「どうして……どうして私が無能力なの!? 私、全属性ですよ。なのに、何でそんな事が……!?」
「全属性者だからといって、必ず能力を持てる訳ではないんですよ。本当に残念ですけれど、諦めて下さい」
そんな事言われても諦められる訳なんてない。私の期待は大きかった。それだけに、こんな結果は到底受け入れられたものじゃなかった。
でも周りはそんなのお構いなし。学校のみんなは何の能力も持たない私を馬鹿にして、それから私の事を“ロミ・メルジェフ・リコン”なんて呼ぶようになった。悔しかった。
そりゃ能力があると分かった人もみんながみんな満足してる訳じゃない。中には望んでたのとは全く見当違いの能力しか持ってなかった人だっている。でも、私から見れば、能力があるだけまし。それだけだった。
――持ってる不満なんて、持てない私からすれば、大分贅沢なんだから……
涙が出てくる。どうしてこんな結果になってしまったんだろう。そればっかり考えてしまう。成長しても何もない、努力しても無駄、何をしても手に入る事はない。
――いっそ、誰も能力なんて持ってない世界だったらこんなに悩まなかったんだろうな……
なんて思ってみるけど、このミ・デアは能力者がいるのが当たり前。いくら“たられば”な事を考えたって、余計に惨めになるだけだった。
気付けば辺りはすっかり薄暗くなってた。昼過ぎからここにいたけど、うじうじしてる間に日は沈んで赤月が昇っていた。
いけない、もうこんな時間。思った以上に長々と居座ってしまっていた。私は慌てて立ち上がると、通学カバンを抱えて家路を走り出した。
――……早く帰らないと。ママのお説教は嫌だ!
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