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頭上で轟音(ごうおん)が鳴り響いた。100の雷鳴をあわせたよりも強烈だ。
サイコが約束した5分間が過ぎたようだ。謎の戦闘ヘリコプターを迎撃するために、スクランブル発進したVTOL機がようやく飛来したところだった。
直下で聞く垂直離着陸戦闘機のジェットエンジン音は、耳だけでなく身体(からだ)全体を殴(なぐ)りつけられるようだった。サイコと瑠子(るこ)さまがこちらに向かって、なにか叫んでいた。口の動きが見えるだけで、なにも言葉はわからない。
ジェット噴射が巻き起こす奔流(ほんりゅう)のような突風が地上を揺さぶっていた。背の低い野草が嵐の海のように荒れ狂っている。タツオは不思議な時間のなかにいた。自分でも気づかぬうちに逆島(さかしま)流時間操作術「止水(しすい)」を発動していたのかもしれない。すべての光景がスローモーションで動いている。
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