第1章

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嘘がはびこった空き教室  触れたら崩れてしまいそうなガラス窓 ひびの入ったコンクリートの壁に 鋼の蔓はあちこちに巻きついて 鉛色の床の上   割られた鏡の欠片 “誰が割った、誰かが割った” 拾おうとした指先から流れるものは鮮血 欠片は何もうつさずに ガラス窓の向こうを仰いで   けれど、みえたのは灰色の砂埃 血は欠片の上にも滴り落ちて  欠片はそれをゆっくりとはじき返し    床に  不格好な水たまりを描く 壊された砂時計の砂      両のてのひらですくい上げて 落ちていくその軌跡に    意味を見出そうとする しかし いつまでたっても無表情な砂は 私を嘲笑うかの如く ゆっくりと舞い落ちた 虚数の向こう側   全てが屈折の織りなす歪んだ幻の世界 忘れ去られ 見出すことのできない解を 知っているのは     誰?
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