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カナの元へ戻って来ると、彼女は開口一番にお疲れ!と笑ってくれる。
同じ笑うでもイフォルマ君とは違い、暖かいその笑みに私も笑いうん!とだけ伝える。
するとカナは少し驚いた様子を見せる。
カ「あれだけ楽しみにしてた召喚だったし、ちょっとは凹んでるかなーって思ってたんだけど?」
私の肩で丸くなっているクロを一瞥すると、ナイフで切った指にと塗り薬を出してくれた。
ありがたく薬を受け取り、カナの質問の答えを
マ「うん、それがね…」
言いながら薬を塗ろうとした指先を見て、言葉がでなくなった。
カ「?、どうしたの?」
カナが不思議に思ったのか聞いて来るが、私はそれに答えることも出来ずただ指先を見つめる。
無い。
バッ!と顔を上げカナを見る。
心配そうに此方を見つめていたカナに指先を見せる。
マ「ナイフで切った怪我が無いの」
其処には切る前の万全の状態の私の指があった。
カ「え?反対の手は?」
そう言われ左手を見るがやはり傷は無い。
はっ!?と、肩に乗っているクロを見た。
カ「?まさか、その猫が…?」
私とカナの視線を感じたのか、クロが不意に顔をあげる。
そして、にゃーと猫らしい鳴き声をあげるとムクッと起き上がり私の肩を飛び降りた。
そのまま此方を振り返ることはせずに訓練所の入り口側へかけていく。
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