男にだって二言くらいあるさ。

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「いいか?これは俺の我儘なんだよ。俺は俺の為にお前の病気を治す。いや、違ったな。この言い方には語弊があるーー そこで男は一拍付く。 そして再び口を開くと ーーわりぃ!既に治したわっ(笑)」 ………? 意味不明。まさにその通りだった。 ネ「へ?」 「いやー、あんまりにもネルが長い事喋るもんだからさ!その間にちょちょいとね」 そこで漸く違和感に気がついた。 ネ「(あれ?音が……)」 「何惚けてんだ、久しぶりの世界だぜ?しっかりその目に焼き付けろよ」 男が一歩横にずれる。 と、同時に瞼の奥が明るくなった。 ネルは思わず息を呑み、約一年ぶりに重たい瞼を開いた。 ネ「っ?」 目の前には部屋の窓があり、その奥にはこの王国を一望できる景色があった。 赤、黄、青、緑。様々な光を放つその町の景色(色)は普通に存在し、でも言葉を忘れる程綺麗で……… 「……はぁ、何泣いてんだよ」 ネ「え?…あ」 視界の端に男が佇んでいた。 真っ黒な髪に真っ黒な服。 闇に溶け込みそうなその風貌に金色の瞳が映える。 不思議な事に恐ろしいという感情は無く。 その姿に見惚れていた。 「折角病気が治ったんだ。涙なんかじゃ無くて笑えって」 ヘラヘラと笑う彼は、ネルの両の頬を摘み、 「えいっ!」 無理矢理持ち上げ笑顔を作った。 ネ「い、いひゃいれす」 「なははー!やわらけー!」 そこからは男の独壇場となる。
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