第1章 風の羅針盤

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☆へえ!凄いですね、でも慣性との妥協点が問題でしょうね。操縦者のコントロールできない反動が大きくなりますから。 ワウ『さすが!わかってるじゃない、だから積層バネを混成してね・・・・』 二人は結界工房へ向かう道すがら、いつ尽きるとも知れない技術の応用についての話を続けるのだった。 そして二人の乗った機工人は一本の細い回廊のような谷に方向を変える。 幅はスワン級の船が一隻通れるほどしかない。 ☆ワウさん、もしかしてこの谷は人工の? ワウ『ええ、そうよ。結界工房には聖機人や結界炉のストックがたくさんあるのよ。通路が無いと喫水外を陸送するしかないから万一の襲撃に備えての防衛もかねて喫水に囲まれた谷を狭く掘ったのよ。』 ☆(大軍が押し寄せても一隻つづしか通れなきゃ防御側が有利というわけだな。) ワウ『掘削には100年ほどかかったって工房の歴史書に書かれてたわ。あたしが生まれた頃に完成したのよ。』 ☆へえー・・でも崖の風化具合は掘られてからもっと経ってる様に見えるけど・・・ちなみにワウさんは幾つなんですか? ワウ『順三・・・普通、女性に体重と歳の話はタブーでしょー?(笑)他の皆には内緒ね、今年98よ。』 ☆きゅっ!!・・・(汗) ワウの返答に順三は絶句してしまった。 というのもどう見てもワウの見かけは17~8にしか見えないからだ。 ワウ『驚いた?まあ無理もないけれど、これも結界工房の特異性の効果なのよ。工房の地下は深ければ深いほどエナの濃度が高くなるの。するとプレッシャー効果で時間の流れが遅くなって成長が遅くなるのよ。時間のかかる開発をする研究者ほど深い場所で作業するからこんなことになっちゃうんだ。』 ☆じゃあ・・・ワウさんは70~80年機工人の開発をしてたってこと・・・? ワウ『うふふ・・そのとおり、実際は16で工房に入ったから82年ね。』 驚きであった。 目の前にいる可憐な少女が自分の祖父母よりも年上ということになるのだ。 ☆(まるでタイムカプセルだ・・結界工房・・・恐るべしっ・・・。) 驚きの隠せない順三とワウの乗った機工人はひたすら結界工房に向けはしりつづけるのだった。
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