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「・・・・・・、歩く、か」
ここでぼうっとしていたも仕方がない。僕は月明かりに誘われて歩き出した
夜の街は、昼間とまた違った顔を見せる。しかし人通りが少ない
途中通りかかった公園で、インスタントの蕎麦を啜る、アンニュイな雰囲気の少年(大体僕と同じくらいの年か、年下かもしれない。家出だろうか?)を発見したくらいで、路上に人は中々いない
うーん、この不気味感はそそるものがある
「・・・・・・、って言うか、寒い」
部屋着で飛び出してしまったから、当たり前だけれど、僕は冬の夜空の下を歩くには、薄着過ぎるくらいに薄着だった
困ったな・・・・・・、まあ寒さくらいならば我慢できる。流石に凍死する、ということはないだろうし。その前に家に帰還すればいい
夜の街の寒さに、身を切られるも悪くないと言えば、悪くない
「・・・・・・、・・・・・・」
しばらく、あてどもなく歩く。除夜の鐘は聞こえないから、まだ年は明けていないだろうと推測がたった
歩いていくうちに、段々と細い路地へと誘われていく。今の僕は、誰かに見せられたようなものではないから、ありもしない人目を避けるように、という感じなのかもしれない
細く、暗い道
どこかで猫が鳴いた気がして、その不気味さに背筋が凍る。ぞくり、ぞくりと
背後の闇から何かが手を伸ばしてきそうな感覚に襲われ、おもわず走り出したくなる。でも走らない、もう今日は十分走った
僕が逃げるのは現実からだけで十分だ。幻覚(幻想)からも逃げてどうする
夜の街は、恐怖と美しさが混じりあって、僕のような人間にとっては羨望の的だった―――、でも、恐怖はどうしても拭えない
しかし、それすらも悪くない、と思える程度には、気分が高揚していた
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