プロローグ

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平穏である 何が、と言えば、僕の人生のすべてが 特筆されるべき異常も、事件も、なにも起こらない。今、街では、平和なこの街では珍しく、殺人事件は勃発しているらしいけれど、僕にはそれすらも関係ないことであり、僕の日常の妨げになるものは何一つない 中学二年生のこの時期―――、冬 来年にはもう中学三年生で、受験のことなんかを考えなければいけないらしい・・・・・・、高校生とか、受験とか、僕には遠い未来の話だとしか思えなかったのに 年を取る実感がわかなかった それは言い換えれば、成長していると思えないという事であり、僕の不安定性をよく表している―――、例えば、一年後の僕が、僕は想像できない 中学三年生の僕は、どんな風になっているだろう どんな性格で、なにを好み、なにを嫌い、なにを疎み、どんな外見をしているのだろうか 背は伸びるのか。体重は増えるのか。髪の長さは? 恋人は? 友人は? 今の人間関係を保っていられるのか? 健康なんかも、損なわれずに保っていられるのだろうか? ―――、このまま平凡に、平穏なだけの日常を、僕はただ食いつぶしていくことしか、出来ないのか? なにも成し遂げずに、ただ時間を殺していくことが、僕の生まれた意味なのだろうか 未来に対する漠然とした不安が、いつも心に募っていて―――、そして、だからこそ、いつも思うのだ なにか、面白い出来事が―――、そう、こんな平凡を、日常を、平穏を、全て丸ごと〝ぶっ壊して〟くれる何かが、起こってはくれないだろうか―――、と 事件が、欲しかった 平和よりも、平穏よりも 学校に唐突に攻めてくるテロリストでもいいし、あるいは突然現れた魔法陣によって、異世界に飛ばされてしまうのでも構わないし、もしくは空から降ってくる女の子を受け止めたばかりに、大戦争に巻き込まれてしまうのでも、脱出不可能な、体感型オンラインゲームに取り込まれて始まるデスゲームでもいい 僕は平和が嫌いで―――、だから、ずっと願っているんだ 異常を。事件を 力が欲しかった。僕はこんなつまらない日常を送るような、凡俗なんかじゃないと思っていた
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