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会社からの帰り道、横断歩道の信号が赤になった。
イヤホンから聞こえてくる音楽はいつもと変わらない歌を届けている。
スマートフォンの画面を眺めながら行き交う車の振動を体に響かせていた。
何人かの知らない気配が俺の後ろに積み重なる。
信号を待つのは嫌いじゃない、立ち止まる度にスマートフォンの画面をなぞり新しい情報をチェックする。
人々の呟きを見る事の出来るアプリが俺の生活には欠かせない。これがあるお陰で他人と会話をしなくても良くなった。
信号が青に変わる。
一斉に歩き出す人々、後ろから他人が来るのは少しだけ恐怖を感じる。
突然ナイフで刺されたりしないか、ハンマーで殴られたりしないか、肩に手をかけられて襟を絞られたりしないか。
普通はそんなことあり得ない。至って平和だ。
この平和があるからこそ、音楽を聴き回りの音を遮断して外を歩くことが出来るのだ。
誰も俺に話しかけることも無いし、俺も話しかけたりしない。いつもの生活だ。
こうやって自分自身と話をしながら帰宅するのが日課になって3年。
同じ道を同じ早さで歩いて同じタイミングで信号待ちをする。
いつもと同じ。
それが俺の望むもの。
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