第四十九話

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 通信を切ったクジ師範は、大きく肩の力を抜いた。すごい話を聞いてしまったような気分だ。 (よもや、そのようなことになっていたとは……)  レスティ学園長の過去自体、そこまで根掘り葉掘り聞いたことは勿論ないが、学園の教師ならばある程度のところまでは耳に入れている。今は亡きダンブラ財団の元メンバーであったレスティ学園長は、自分を含めた教師たちですらも計り知れない、大きな過去を抱えているのだ。 「……む?」  寝袋の中で、身じろぎをするリョウ。傷が痛むのか、ときおり苦しそうにうなされる。そんな彼を見て、クジ師範は口を結んで、腕を組んだ。 (学園長殿が、このリョウ殿を特別視する理由が、少しだけ理解できたでござる……。彼の御祖母様が何者かは存じないが、もしかするとこのリョウという男は、この先、辛い選択を強いられることになるのではないか……。それこそ、世界そのものの命運を握ることに……)  そこまで考えたクジ師範は、いやいや、と冷静になって頭を振った。 (万が一、そうなったとしても、リョウ殿なら大丈夫でござるな。学園長殿もいるし、拙者たち教師も付いている……。仮に最悪の事態を迎えることになっても、彼ならきっと……)  “睡眠先延ばし薬”を飲んでおいて正解だった。これなら夜通し、誰にも邪魔されることなく、考え込むことができる。  睡魔に襲われることはないが、これと一緒に、頭痛薬も持ってくればよかった、と一人後悔するクジ師範であった。   
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