Counteroffensive-反撃の鯨波-

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「…………」 ……戦力増強が本格的に始まってから、優秀ならば前線での任務にもつく女性隊員が次第に増えていっている。 無論、男性隊員数と比較すればその比率は低いが、特別統合機動部隊でも航空作戦群に二人…… そして、目の前の相模。中崎が知るだけで三人把握している。 時代が移りつつあるんだな……等と思考を巡らせていると、自分達とは少し異なった戦闘服に身を包んだ男が二人の元へ歩み寄ってきた。 「装甲車の乗員が1名負傷してる。敵の砲撃を受けたときに、衝撃で頭を打ったらしい。軽傷だとは思うんだが、傷口の手当てだけ頼めるか?」 男の奥へ目を向けると、18式から出てきた乗員が一人、レイド・リーコンの隊員に土嚢にもたれ掛かって座るよう促されている。 相模は「了解です!」と救急道具を手に抱え走っていった。 「……増えてきましたね、女性隊員。」 相模の背中を眺めながら、手当てしてほしいという旨を伝えた男が中崎に言った。 「そうですね。桐生一尉の隊は全員男性ですか?」 「ええ、まあ。第1急襲偵察連隊は、西部普連(西部方面普通科連隊)内の技能資格保有者のみを叩き上げて編成された部隊ですから。紅一点なんて存在はいませんよ。」 「正直、一人ぐらい居てほしいもんですがね」と中崎に笑顔を向けるのは、第1急襲偵察連隊.第1中隊内の一個小隊を束ねる男、桐生 隆邦(キリュウ タカクニ)一等陸尉である。 中崎は、作戦前のブリーフィングで既に彼と一度会話を交わしていた。 中崎より階級は二つ上、加えて歳も一回り程重ねているのだが、中崎等のような他の部隊の現場指揮官達には、階級が下であろうと丁寧な口調で話し掛けてくる珍しい人間である。
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