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そのまま桐柳と待ち続けていると、やがて周囲の確認を終えた隊員達に混ざって直江率いる第2分隊も戻ってきた。
「隊長。」
「ご苦労だった直江。」
直江は敬礼すると、自身の後ろに控える隊員に目を向けた。
中崎と桐柳もそれにつられて視線を動かすと、第2分隊の自衛官二人に支えられた中国軍兵士が目に入った。
報告通り腕を負傷し、そして何より表情が脅えきっている様子だ。
「そいつを前へ。」
「はいっ。」
直江の指示で中崎等の前へと押し出された中国軍兵士は、涙を流しながら必死に「Help……!help……!」と繰り返している。
━━こいつ……何をそこまで怖がってる……?
異常なまでの恐怖している様子を怪訝に思いながら、中崎は先ほど側を離れた相模へ声を掛けた。
「相模三曹!そちらの手当てが済んだら戻ってきてくれ!」
「あ、はい!ちょうど終わりました、今向かいます!」
相模はせっせと医療用具を箱に詰め込むと、それを手にして中崎等のもとまで小走りで戻ってきた。
「立て続けで悪いが、こいつの腕の処置を頼む。」
「了解。」
相模が近付きしゃがみ込むと、中国軍兵士は大袈裟なほど身体をびくつかせた。
「大丈夫、治療するだけ。」
しかしそんな彼に包帯や消毒液やらを目の前で見せ、自身が衛生兵であることを相模がアピールすると、中国軍兵士は怯えた瞳のまま彼女と医療用具とを交互に見つめた後、自身の治療のためと理解したらしく、相模が患部へ伸ばした手を素直に受け入れた。
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