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「……直江。」
「はい、なんでしょう。」
相模による治療を横目に、中崎は直江を引き寄せて耳打ちする。
「この兵士に何か吹き掛けたりしたのか?」
「いえ、そんなことはしてません。ただ……元々奇妙な点はありました……」
「奇妙な点……?」
「ええ…… 」
直江は頷くと、まだビクビクとしている中国軍兵士へ目を向ける。
「自分達が最後に突入した建物で捕らえたんですが、その時は怯えた様子は見せつつも鋭い視線を向けて『殺せ!早く!』としきりに叫び続けてたんです。」
「早く殺せ……ね。馬鹿げた主張だな。」
やれやれといった表情を浮かべる中崎の言葉に、同調しつつ直江は続けた。
「まったくです……ただ、敵の手に落ちるぐらいなら。等と考える兵士もいないことは無いでしょう。これを奇妙と言うには少し強引だと思います。」
「ああ、つまり問題はその後ってことか?」
「そうです。殺せと叫び続ける彼にきっぱりと言いました。お前は殺さない、と。……その直後です。今現在のように、途端に過剰に怯え始めたのは……」
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