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「……殺されるかもしれないという状態より、殺さないとわかった状態の方が怖い……ってことか……?」
「はい……おそらくは、一月前から噂されている例の捕虜に関する情報が絡んでいるかと思われますが……」
「自衛官が中国軍捕虜を惨殺した後に路上に放棄した、ってやつか……」
中崎は深く溜め息を吐いた。人民解放軍内にも隅々にまで一種の『洗脳』は行き届いているらしい。
そうでもなければ、生き長らえたことに対してここまで過剰な恐怖感を見せるはずがない。
人民解放軍内で好戦派では無い人間達でも、誤解を解かない限りは徹底的に刃を向けてくるだろう……
「厳しい戦いになりそうだ……」
そう呟きながら、黒煙が立ち昇る沖縄の空を仰ぎ見る。
「……ん?」
その時、ふと視界に入った赤い点に、中崎は思わず目を細めた。
━━あれは……?
凝視する先のその物体は、目まぐるしい速さで大きくなっていく。
それに比例して、細められた中崎の目は大きく見開かれていった。
━━大きくなっているんじゃない……
……近づいてきてるんだ!!
「危ない!!全員伏せろーっ!!」
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