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『……ああ、もういいもういい。Spear.3、それからSpear.4。お前ら帰ったらお説教だ。』
『えっ……』
『た、隊長……私はただ注意を……!』
『それ以上無駄口を叩いたら、部隊の風紀を乱したとして本当に群隊長に報告するぞ?』
『っ……』
高綱の冷酷な宣言は、灯った口論の火を容赦なく踏み消した。
とは言っても、この二人の夫婦喧嘩(実際は夫婦ではない)━━もとい口喧嘩はいつもの事であり、高綱はそれを承知の上で技量を買い、自身の隊に二人のパイロットを引き抜いた。
本気で処罰する気は無いのだが、これから作戦開始という時に甘えさせる訳にもいかず、二人の部下が黙りこくったことを確認し、取り敢えず反省文でも書かせようと密かに心に決める。
気を入れ直してレーダーへ目を向けると、中央には自身を中心に左右を飛ぶ四人の部下が操る機体が発するアイコン。
これらの少し左側に、第1戦闘攻撃飛行隊を形成する別の5機編隊の味方の反応。
そして……前方に普通の航空機では無いことを示す、微弱な反応が12個。しかし、完全にレーダーから姿を消すには至っていない、更に言えばそれらは微弱ではあるが第1戦闘攻撃飛行隊が操るF/A-35Bが敵レーダーに映るよりは、幾分か鮮明な反応が表示されている。
その特徴は、高綱が蓄えている情報から機種を絞り込む大きな要素となった。
『……』
━━やはり……この先で戦場を蹂躙しているのは、我々にとって最大の脅威の一つにして、好敵手であるに違いない。
と思った矢先。敵勢12機が一斉に味方機10へ急速接近してきた。
どうやら敵方も、それ相応の高性能レーダーを搭載しているらしい。
『っ!敵部隊、来ます!』
『━━こちらホールアイ。全機、交戦を許可する。繰り返す、交戦を許可。』
『了解、Spear全機、Energy!』
AWACSからの交戦許可を受け、10機のF/A-35Bが一斉に散開した。
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