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『全機油断するな!こいつら今までの部隊とは違うぞ!』
高綱の声を受け止めながら、敵機を追跡するため水瀬はレーダーへ目を向けた。
僅かな反応を頼りに機体を右旋回、J-20を追う。機銃弾とミサイルが飛び交う中、水瀬が目をつけたJ-20が上昇していく。
『逃がさない……!』
エンジンの出力を高め、HMDバイザー
(ヘッド・マウント・ディスプレイ)が敵の熱源を捉える距離まで差を埋める為に高速で上昇する。
のし掛かるGが身体をシートへ押し付ける。詰まりそうになる呼吸が続くが、水瀬はそんなことは意に介さず、ただ前方を飛ぶJ-20のみを見据えていた。
その更に前方には巨大な乱層雲。追われていることに気付いているであろうJ-20は、そこへ突っ込んで姿を眩まそうとでもしているのか。
『逃がさないって言ってるでしょ……!』
見失う前に仕留めんと、更にエンジン出力を上げる。甲高い悲鳴と共に、F/A-35BはJ-20を食い破らんとその背後へと迫る。
やがて、水瀬のHMDに表示されている照準BOXがJ-20のエンジンから噴出する熱源を探知、点滅してその捕捉へのカウントダウンに入った。一定のリズムで奏でられる音が響く度、死刑宣告までの時間が潰されていく。
タッチパネルを一瞥、短距離AAMを選択し、セーフティが解除されていることを確認する。
……刹那。
カウントダウンが、永遠と続く高音の直線へと変わった。まるで一人の人間がその生涯を閉じたことを告げる心電図の如く、耳に流れる無慈悲な『執行命令』は、水瀬の指先に無条件で力を加えさせた。
『━━FOX-2!!』
ミサイル発射を意味するコールを発すると同時に、機体下部の兵装格納庫が開口。機体外部へ展開され、火炎を噴射した一矢がJ-20に放たれた。
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