Counteroffensive-反撃の鯨波-

42/43
前へ
/90ページ
次へ
次の瞬間、上昇を続けていた水瀬のF/A-35Bはその動きを一転。突如アフターバーナーを切り、機体を垂直な状態から背面を海面に向ける形で傾け、更にエアブレーキを作動。急減速した。 まるですぐ後ろから全速力で迫ってくるJ-20を、わざと自機に追突させようと言わんばかりの機動である。 ……だが、水瀬にそんな気は毛頭ない。 彼女は敵機を操るパイロットの技量を『信じて』、自ら壁になるような無謀な行動に踏み切ったのである。 今の敵機から見れば、僅かに左上に逸れた状態のF/A-35B。このままJ-20が突っ込んでくれば、その機首はちょうど水瀬のコックピットへと突き刺さることになる。 ……だが、結果は。 突然のことにも関わらず、J-20のパイロットは驚異の瞬発力で咄嗟に操縦捍を右に傾け、すれすれの所で回避することに成功した。 その間、僅か1秒足らず。 ……同時に水瀬の口角が、僅かに上がる。 敵機がマッハ2という速さで真横をすり抜けた刹那、彼女は目にも止まらぬ速さでパネルを操作し、再びエンジンの推力を最大限にまで引き上げた。 直ぐに真上へと機首を戻したF/A-35Bの先には……水瀬を追い上げたJ-20の背中。 HMDの照準ボックスはしっかりとその熱源を捉えている。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

430人が本棚に入れています
本棚に追加