Counteroffensive-反撃の鯨波-

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彼女が賭けたのは、敵パイロットの技能の高さだった。 味方のF-15Jを多数撃墜し、更に先程後ろに付かれるまでに敵機がとった機動。 敵パイロットが優れた能力を有していることは、その時点で充分に把握できた。 簡単には勝てる相手ではない。だとすれば、こちらもそれ相応の大胆かつ相手の意表を突ける行動を取ろうという勢いで掛からねば、撃ち落とされてしまっても何ら不思議ではない。 背後をとられていた際、中々敵機を振り切れなかった水瀬は、敵機が此方の動きに密着するように動けるのはパイロットの瞬発力の高さにあると推測していた。 だからこそ踏み切れた、『自らぶつかりにいく』という方法。 マッハを越える戦いで、突然動きを止めた機体が迫ってくるという状況に飛び込む。敵はコンマ数秒でも対応が遅れれば、自らの命で水瀬を撃ち落とすことになる。 ならば、何とか機体の向きを変えて衝突を免れる他ない。故に敵機は水瀬の機体が僅かに左側に寄っていることを認識した瞬間、脊髄反射で咄嗟に機体を右に傾けたのである。 そして結果、J-20はF/A-35Bへ激突する危険を回避することに成功したわけだが、それと引き換えににJ-20は背後を撃ち抜かれる危険性に自ら飛び込む形に陥ってしまった。 ……そう、水瀬は敵パイロットの技量を分析した上で、『あの敵ならば避けることができる』と踏んだのである。 そしてその決断は……水瀬に絶好の地点からの攻撃を行うチャンスを与えた。 『━━Spear.4、FOX-2!』 ━━これで終わりよ……! 胴内から射出された対空ミサイルが、中国軍最新鋭機を食い破る瞬間が、目の前に迫る━━
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