真夜中の校舎で歌う

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 それなりに格好よくキメてみたはいいが、今はまだ手探りの状態だ。自殺した三人の霊に会いに行くという所までは決めていたものの、さてどの自殺者から会いに行くべきか。 「発端となったのは二年前、一年生女子があの時計台から飛び降りて自殺。去年は二年生男子が同月同日に旧校舎の屋上から飛び降り…、そして今年、三年生女子がまたしても同月同日に三階の教室の窓から身を投げた」 「二年連続で起きた時点で、本来なら三年目も警戒しとくべきだったっす。学校側の危機管理不足っすよ」  顔をしかめた世舟が俺からの説明にそう返すが、それはあくまで結果論だ。学校側だってまさか三年も連続で自殺者が出るなんて思ってなかっただろうし、思っていたところで何らかの措置を取れていたかどうかは怪しい。できたとしてお祓い程度か。  まぁ、俺らダイバーに言わせればお祓いなんてナンセンス、そんなもので本当に霊が祓えるなら苦労なんてしない。 「でもそれならやっぱ、最初に自殺した子に会いに行ってみるのがいいんじゃないかなー?物には順序ってもんがあるからね!」  説得力のカケラもない意見だったが、実際のところ、檸檬のその提案を却下する理由も見当たらない。それに、ここでこのままうだうだと悩んでいる時間も惜しい。 「なら、そうしよう。二人とも、まずはあの時計台のある校舎を目指すぞ」 「じゃあじゃあ、私があそこまで案内するね!ここ、母校だから詳しいんだ~!」  そう言って、右手を勢いよく上げつつ小さな胸を張った檸檬だったが、世舟が不思議そうな顔でグサリと痛いところを突く。 「いや、レモンさん。案内するもなにも…、校庭をこのまま真っすぐ突っ切ったら校舎に着くっすよ?」 「やだもん!このオバケの集団の中を突っ切るとか、私ゼッタイやだもん!やだやだやだ!」  あぁ、発症した。檸檬の『やだもん病』。 「おいチビっ子。世舟の言う通り、ここはどう考えても直進するのがベストな選択だろう。あまりわがままばかり言ってるとそのツインテールを左右から力任せに引っ張るぞ」 「そうっすよレモンさん。幸い、この校庭にはもう悪意を持つイレギュラーはいなさそうですし」 「やだったらやだっ!悪意があってもなくてもオバケはやだっ!ほら、あっちの自転車置き場のほうとかオバケ全然いないじゃん!あっちから行こ?ね、冥くん!」
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