真夜中の校舎で歌う

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「んで、まずはどこに向かうんすか、冥さん?」 それまでは首からぶら下げていたゴツめのゴーグルを目元に装着し、世舟が俺に問う。これをつけると途端にいっぱしのサポーターっぽく見えてくるから不思議だ。 「そうだな….。三年連続、まったく同じ日に自殺者を出した都雲高等学校。何かの因縁か、祟りか、それとも単なる偶然か…。とりあえず、その死んだ三人を探して会いに行ってみるとしよう」 「うあー、冥くん!なんだか怖いね~…!蛇が出るかジャが出るか、ってヤツだね!」 鬼は出ないのかと突っ込もうかとも思ったが面倒くさいので軽くスルーして、俺はゆっくりと校門から学校の敷地内へと足を踏み入れた。 そしてその瞬間、目に飛び込んできた光景に思わず足がすくむ。学校のリバースワールドには幽霊がうじゃうじゃいるぞとか自分で言っておきながら、まさかこれほどまでとは思っていなかった。 校庭に所狭しと蠢くイレギュラーたち。 そのほとんどが少年少女の亡霊だったが、着ている制服は今風のものから古風なものまで様々だ。大正時代あたりの書生のような姿もチラホラと見える。 ある者は立ち尽くし、ある者はフラフラと歩き、地に倒れる者もいれば、狂ったように駆け回る者もいる。 特に、地面から無数の手が突き出ているあのサッカーゴール周辺がやばい。俺がもしこの学校の現役サッカー部員だったとしたら、明日には確実に顧問へ退部届けを出すだろう。 「世舟、索敵を開始してくれ。範囲はあまり広げなくていい」 「コマンド了解っす。『ヘイムダル』起動」  世舟がインストールしているアプリケーションのひとつ、『ヘイムダル』。一定範囲内に敵意を持ったイレギュラーがいないかどうかを確認する機能を備えている。 イレギュラーも様々だ。どちらかといえば我々「侵入者」に無関心な場合が多いが、強い怨念を抱いたまま死んでいった亡霊たちは、生者を貪り喰おうと問答無用で襲いかかってきたりもするから油断できない。 また、何らかの刺激を与えることで急に凶暴性を剥き出しにしてくる奴もいる。いずれにせよ、早いうちから用心しておくに越したことはないって訳だ。
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