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恋愛なんて面倒くさいだけ、人を想うだけで疲れる。
いきなり教室に来たかと思うと「君、彼女その五ね」と言って去った。
意味不明な先輩の言動に振り回されるつもりはない。
そんなの労力の無駄だ。
「もう別れなよ」
もうこれで何回目だろう、友だちの説得。いい加減にしてほしい。
あたしは誰に何を言われてもやめる気はない。
これはあたしの意地。
神サマは意地悪だから。
抗ってやるんだ。
「イヤだ」
「そこまで意地張ることなの?」
「そんなんじゃない」
もうまともに友だちの顔を見ることができない。
やましいものがあるわけじゃない、でも腹の底に重たいものがある。
ひょっとしたらあたしは踏み出してはいけないとこを歩んでいるのかな?
逃げ出すように友だちから離れて廊下に出ると、出先で人にぶつかる。
尻餅を付いてぶつかった相手を見ると忍だった。
喧騒から孤立したあたしたち、見つめていた時間は数秒なのに永遠にも感じた。
「どこ行くの?」
「……保健室」
「一緒にサボる?」
「えっ」
起き上がった途端に忍から手を引かれなすがままにされる。
一瞬スキを見せるだけでマズイことってあるんだな、とか他人事のように思ってしまう。
がっちりと握られた手は放せそうもなくて、忍に付き合う以外の選択肢はあたしになさそうだった。
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