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沈黙という生暖かい空気が私たちを包む。
部屋に目線を向けると、ファンシーグッズで固められた部屋はその本来の持ち主の容姿をありありと想像がつく。
きっとあたしとは正反対の可愛い女の子なんだろう。
「帰ったら、大浜が居るんだろ」
「それは……。居たって関係ないですよ」
強がりだ、考えただけで耐えられない、我慢できない、苦しい。
嫉妬があたしの細胞一つ一つを蝕んでいく。
「ただ、本当に帰りたくないだけ。友だちに言うと心配されるから、香坂先輩は一応彼氏でしょ?」
「そっ」
たぶん、香坂先輩はあたしが誰を好きか気付いてる。
それ以上突き詰めないのは先輩が優しいから。
恋愛って好きだけじゃできないよね。
昔のあたしには陸上があった。
そして左手が手にしたのはお兄ちゃん。
あたしはお兄ちゃんをお兄ちゃんだなんて思わなかった。
あたしは後妻の連れ子、お兄ちゃんとは赤の他人。
急に湧いて出来たような血の繋がりに、どれほどの価値があるというのかあたしは知らない、知りたくもない。
「何か手伝わせてくれませんか?タダで泊まるなんてできません」
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