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「じゃあ、あたし先輩の妹になります」
少しの沈黙は二人の空気を柔らかくさせた。
きっと緊張の糸が途切れたんだろう。
「まあ薄々は気付いてたけど、織依の好きな奴って」
「……お兄ちゃん」
「まじ?」
「マジですよ。実はお兄ちゃんとあたしって血が繋がってないんです。あたし一人っ子だったんです、でも十三のときにいきなりお父さんができて、お兄ちゃんとか言われて今のお兄ちゃんに会わされて」
思い出すだけであれは強烈だった。
「いきなりでビックリしたし、お母さんを軽蔑した。でもあたしはお兄ちゃんから目が離せなかった、誰にも内緒ですよ」
するとあたしは自然に先輩にキスしていた。
触れるだけのキス。
目を閉じてそこにはお兄ちゃんを思い浮かべる。
「なっ」
「口止め料です、お兄ちゃん」
あたしは香坂先輩の部屋を出た。
心に残る恋の香りはお兄ちゃんに抱いてる気持ち。
お兄ちゃんは今ごろ魔女と肌を合わせているのだろうか……。
考えるだけで嫉妬に苦しむ。
どうして想うだけで満足できないんだろう。
触れたいと願ってしまうのだろう。
血の繋がりなんてないのに、あたしはお兄ちゃんに触れられない。
子どもじゃないあたしはジレンマに苦しむ。
もうこの辛い恋から、罪な想いからーー。
解放されたい。
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