第4話・じれんま

5/5
前へ
/69ページ
次へ
「じゃあ、あたし先輩の妹になります」 少しの沈黙は二人の空気を柔らかくさせた。 きっと緊張の糸が途切れたんだろう。 「まあ薄々は気付いてたけど、織依の好きな奴って」 「……お兄ちゃん」 「まじ?」 「マジですよ。実はお兄ちゃんとあたしって血が繋がってないんです。あたし一人っ子だったんです、でも十三のときにいきなりお父さんができて、お兄ちゃんとか言われて今のお兄ちゃんに会わされて」 思い出すだけであれは強烈だった。 「いきなりでビックリしたし、お母さんを軽蔑した。でもあたしはお兄ちゃんから目が離せなかった、誰にも内緒ですよ」 するとあたしは自然に先輩にキスしていた。 触れるだけのキス。 目を閉じてそこにはお兄ちゃんを思い浮かべる。 「なっ」 「口止め料です、お兄ちゃん」 あたしは香坂先輩の部屋を出た。 心に残る恋の香りはお兄ちゃんに抱いてる気持ち。 お兄ちゃんは今ごろ魔女と肌を合わせているのだろうか……。 考えるだけで嫉妬に苦しむ。 どうして想うだけで満足できないんだろう。 触れたいと願ってしまうのだろう。 血の繋がりなんてないのに、あたしはお兄ちゃんに触れられない。 子どもじゃないあたしはジレンマに苦しむ。 もうこの辛い恋から、罪な想いからーー。 解放されたい。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加