第1話・イモ女

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昼休み、あたしは戦いのゴングを鳴らしに行こうと席を立つ。 友だちはそれを引き留めようとする。 「可愛くなったんだから行かなきゃ!」 「可愛くなったからこそ、香坂先輩には近づかない方がいいって」 賑やかな周りを他所に友だちはあたしに付いてくる。 ここまで可愛くなれたのは彼女のおかげで、感謝してる。 でもこれはあたしにとって戦いなの。 絶対負けてなんかやんない。 「じゃあ付いてきてよ」 「まあ、それならいいよ」 友だちはが付いて来てくれるのは心強い。 相手はあの香坂先輩だから、あたしも怖くないわけじゃないから。 ただお兄ちゃんがいるから大丈夫かなとは思うけど。 その時点でお兄ちゃんに頼っちゃっててあたしとしては情けないんだなぁ。 香坂静夜(シズヤ)、十七歳(高二) キラキラして色ムラのない金髪。そして整った顔にどこか色気のある雰囲気。 ハデな顔と反比例したクールな性格。 だからモテないわけがない。 というか黙ってても女が寄って来るってやつ? 存在自体がムカつく。 それに加えて「イモ女」発言であたしの奴への怒りは頂点超えてるっツーの! 「香坂先輩、出直してきました。どうですか? もうイモ女なんて言わせません」 周りの喧騒に囲まれて、あたしは静かに言う。 友だちは廊下からあたしを見てる、それだけでも心強い。 「たしかにイモ女じゃねぇけど、俺と付き合うって意味わかってんの?」 「……、わかってます」 体が震えてるのがわかる、気持ちに嘘は付けないな。 さりげなく腕を組んで不安を紛らわせる。 「じゃあ、いいぜ」
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