第2話・チョコレート

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地面を見て歩いてると声が降ってきた。 顔を香坂先輩が校門の柱に寄りかかってて、眉間にややだがシワが寄っている。 「先輩、なんでいるんですか?」 「付き合ってんなら一緒に帰るだろ」 「そういうものなんですか?」 「お前なぁ」 先輩は呆れてた。 わからないんだから聞くのが当たり前なのに、まるであたしがおかしいみたい。 夕日は傾きあたしたちをオレンジに染める。 「あたしは言ったはずです“恋愛を教えてください”って」 「口説き文句じゃなかったんだ、それ」 無理矢理に手を取られ、すっぽり先輩の体に収まる。 自分以外の体があたしの近くにあることに堪らなく抵抗を感じる。 手の先にある他の手、それはあたしのとは違うゴツゴツとしたもので。 「放し……てっ、気持ち悪い」   途切れるようにしか言えない自分が情けない。 睨んだ目は潤いに満ちて目尻から涙が頬を伝う。 「なんで?まあいいけど、帰ろうぜ」 体が離れると冷気があたしを安心させる。 先を歩く先輩はわりと平然としてるみたいで、それがなぜかわからない。 『彼女その五』 これがあたしの固有名詞らしい。 つまり先輩は現在あたしの他に四人の彼女さんがいるってこと。 よくやるよ。 あたしには真似できない。 てかしたくない。
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