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「でも、戸野塚さん。モテますよね」
「そうなの?」
「昨日引き出しにチョコ入れて帰ったんですけど、総務の子と隣の課の子のチョコが既に入ってて。競争率高いから競争力高めないと」
私は気付かれない程度のため息を零してメニューを広げた。本日のみ4名以上でバレンタインランチをご注文のテーブルにチョコピザを1枚サービスします、という札が挟まれていて、私はこのために呼ばれたのだと瞬時に理解した。大竹は私に「バレンタインランチでいいですか主任、と、肯定せざるを得ない質問を投げて店員を呼びつける。
22歳の女子が競争力高めないと!なんて鼻息を荒くしている戦場に、34歳の私が乗り込んでも勝てる筈は無い。私は後悔した。戸野塚を好きになったのは仕方がない。好きという気持ちは本能とか動物的で衝動的なものであって、駄目だと脳がセーブしたところで消滅するものでもない。でも、せめて、気付かなければ良かった。可愛い年下くんという位置付けで止めていれば良かった。何故気付いてしまったんだろう。そうだ、戸野塚が出張を入れたからだ。戸野塚が今日、私とランチを取らないからだ。あの子が悪いのだイケナイのだ!、と心の中で戸野塚を責め立てていた。
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