【短編】私の恋は一方通行です

１

　引き出しには、いろいろなものが入っている。内容は人それぞれ、そしてデスクのある場所に寄ってもそれぞれ。引き出しを開けたらそこはタイムマシン乗り場……なんて漫画もあったっけ。

　普通のごく一般的なオフィスの引き出しならボールペン、鉛筆、消しゴム、付箋紙、定規、ノート、ファイルといったところでしょうか。……そしてゴディバ、ピエールマルコリーニ、デメル。

「ふう」

　深夜のオフィス、殺風景なはずの引き出しを所狭しと彩る可愛いメンバーに私は思わず息を吐いた。バレンタインを明日に控え、こっそりチョコを部下の引き出しに忍ばせておくつもりで戸野塚の引き出しを開けた。が、先客がいた。しかもたくさん。つまりは他の女子に先を越されたのだ。どうやら引き出しの中身は季節によっても変わるらしい。私は手にしていたピンクのラッピング袋をポケットに戻して、戸野塚の引き出しを閉じた。戸野塚は７つ年下の部下、入社からずっと私のチームにいる。私が主任になって初めて迎えた新入社員、だから彼には愛着がある。言うなれば……。