1人が本棚に入れています
本棚に追加
「おそらにね、『え』をかくの。とってもおっきな『え』!!」
娘がよく言っていた言葉。
子供の考えることだから、微笑ましくてクスリと笑ったのを覚えている。
「そうか、それじゃお父さんがお手伝いしてあげるね」
私がそういうと決まって娘は嬉しそうな顔をして、こう言った。
「それじゃね、そのときはかたぐるまして!」
私の肩に乗ることで、空に手が届くとでも思っているのだろう。
キッチンで話を聞いていた妻がニコニコとこちらを見ていた。
「ああ、いくらでもしてあげるよ」
こんな会話をしたのはいつごろだったか・・・・。
時間がたつと記憶も薄れてくるものだ。
あれからどれくらい時が経っただろうか?
疑問に思っても、答えは出てくるものではない。
ほんと、記憶とは不思議なものだ。
あれだけ鮮明に情景やセリフは覚えているのに、
それがいつだったのか
どんな時のものなのか
一切覚えていないのである。
せいぜい覚えているのは、2年以上も前の話ということくらいか。
娘は本当に空と絵が大好きだった。
いつも窓から空を眺め、目を輝かせていた。
確か、あの絵本がきっかけだったかな?
私が仕事帰りに本屋に立ち寄り、たまたまある絵本を見つけた。
絵本のキャラクターが空に絵を書くという内容だったと思う。
それを購入し娘に見せると、娘は大変喜んですぐに
「おとうさん、よんでよんで!!」
と言ってきたのは嬉しかった。
読み聞かせている間娘は、じっと聞いていた。
そして読み聞かせが終わると、
「わたしもおそらにえをかきたい!」って言ったのを思い出すと少し頬が緩む。
と同時に、悲しさがこみあげてくる。
きっと娘は今頃、空の上で絵を書いてるんだろうな。
あの雲がそうかな?
最初のコメントを投稿しよう!