Picture of sky

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「おそらにね、『え』をかくの。とってもおっきな『え』!!」 娘がよく言っていた言葉。 子供の考えることだから、微笑ましくてクスリと笑ったのを覚えている。 「そうか、それじゃお父さんがお手伝いしてあげるね」 私がそういうと決まって娘は嬉しそうな顔をして、こう言った。 「それじゃね、そのときはかたぐるまして!」 私の肩に乗ることで、空に手が届くとでも思っているのだろう。 キッチンで話を聞いていた妻がニコニコとこちらを見ていた。 「ああ、いくらでもしてあげるよ」 こんな会話をしたのはいつごろだったか・・・・。 時間がたつと記憶も薄れてくるものだ。 あれからどれくらい時が経っただろうか? 疑問に思っても、答えは出てくるものではない。 ほんと、記憶とは不思議なものだ。 あれだけ鮮明に情景やセリフは覚えているのに、 それがいつだったのか どんな時のものなのか 一切覚えていないのである。 せいぜい覚えているのは、2年以上も前の話ということくらいか。 娘は本当に空と絵が大好きだった。 いつも窓から空を眺め、目を輝かせていた。 確か、あの絵本がきっかけだったかな? 私が仕事帰りに本屋に立ち寄り、たまたまある絵本を見つけた。 絵本のキャラクターが空に絵を書くという内容だったと思う。 それを購入し娘に見せると、娘は大変喜んですぐに 「おとうさん、よんでよんで!!」 と言ってきたのは嬉しかった。 読み聞かせている間娘は、じっと聞いていた。 そして読み聞かせが終わると、 「わたしもおそらにえをかきたい!」って言ったのを思い出すと少し頬が緩む。 と同時に、悲しさがこみあげてくる。 きっと娘は今頃、空の上で絵を書いてるんだろうな。 あの雲がそうかな?
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