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倒れた獣人はそのまま動かず、少女はそんな獣人の近くでしゃがみこみ、何かでツンツンと刺して首を傾げている。
その光景を見ていた者達は獣人が急いだあまり転んでしまったと理解し、一斉に笑い出し、その笑い声に反応した少女は立ち上がりその集団まで歩き始めた。
フラフラと歩く少女に対し、ハイハイを覚えた赤子を呼び寄せる親のようにここまで来るよう優しく声を掛ける、何気に鬼畜な奴隷達。
そんな中、少女を警戒し、目を離さずじっと睨んでいた彼女は気付いてしまった。
その少女が、自分たちの様な服装ではないこと、拘束具を付けていないことに。
少女が自分たちとは違う化物であることを本能的に感じた彼女は奴隷達の意識が少女に向かれているうちに誰にも気づかれないようその場から離れ木に隠れてその様子を観察することにした。
今それを行う方が比較的助かる可能性のあり、より情報を収集出来ると判断したからだ。
彼女に囮にされたことを知らない奴隷達は、彼女が隠れてから数分後、月明かりによって少女の姿を鮮明に確認することが出来るようになってからようやく理解した。
こちらに向かっているのは少女ではなく、人の形をしてはいるが、所々肉体が溶けて臓器や骨が見え、腹から飛び出た腸を引きずりながらゴブリンを遥かに超える醜い顔で、自分達…獲物を捕らえようとしている化物だということに。
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