『真っ黒クッキング!?』 其の壱 「近接特化型エルフを作ろう!」

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真っ二つにされた彼女のいない馬車の方では、それに巻き込まれ何人かが絶命、全身火達磨になって暴れ、火が馬車や近くの者に燃え移るという地獄絵図が出来上がっており、それを見た彼女は血の気が引いた。 と言っても、別にその光景が恐ろしかったわけではなく、真っ二つになった場所は先ほどまで彼女が座り込んでいた場所であったからだ。 もしあの時、扉側へ移動しなければ彼女は間違いなく死んでいただろう。 そんなことを一瞬思ってしまったが、すぐさま現実に目を向け、彼女は生き残っている者達に一つにまとまって逃げるよう叫んだ。 そうして集団で行動することで、誰かを囮にし、少しでも自分の生存率を上げようと考えたからだ。 馬車の破壊という一瞬の出来事ではあったが、それでも、未だに姿を現さない敵と奴隷商達から逃げ出すことは奴隷たちにとっては容易かった。 しかし、これが生死を賭けた鬼ごっこの始まりだと知る者はまだ誰もいない。 この時、奴隷の生存数28名。 ..・ヘ(((((;TДT)ノ.マッテー! ..・ヘ(。≧O≦)ノ ニゲロー!! ─…助かったのか? しばらく走り続けた奴隷たちは何者かが呟いたその一言によって足を止めた。 そして周囲を確認し、追手が迫っていないか、魔物が近くにいないかを確認した後、その場に座り込んだ。 身体能力が低下する足枷を付けており、まともな食べ物を与えられずただでさえ体力の無い状態の彼らがここまで逃げきれたのは奇跡に等しいだろう。 偶然にも彼らが足を止めた場所には、木々が無く大きな空間であったため、今は体力の回復を兼ね、この場で今後に向けて話し合うことにしたのだ。 あれこれと話が進む中、彼女は一人その輪から外れ周囲を警戒していた。 何故かは分からないがこのままここにいては嫌な予感がしたからだ。 そんな彼女の存在に気づかず、数十分経過し、話し合いは交友を深める雑談に変わっていたその時、ある者がこちらに近づく一人の少女の姿を見つけた。 既に種族の違いという壁はなく、仲間意識の芽生えていた獣人の奴隷一人が、彼女のもとまで小走りで走っている際、 顔面から盛大に倒れた。
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